ブムタン
チュメ、チョコル、タン、そしてウラの4つの谷からなる中央ブータンの中心地・ブムタン。標高2,500m以上のこの地域はチベットからも近いという場所柄、古くから仏教が盛んな地域でした。
現在は国内線も就航しており、西ブータンからのアクセスも非常に良くなったブムタン地方。数多くの古刹・名刹が建ち並び、昔ながらの雰囲気を色濃く残すブムタン谷各地の見どころをご紹介します。
チュメ
ヨトン・ラ(峠)
トンサの街からさらに東へ進んでいくと標高3,400mのヨトン・ラ(峠)に到着します。ここはトンサとブムタンの県境となる峠。この峠を越えていくと中央ブータン・ブムタン地方の入り口であるチュメ谷に入っていきます。
スンゲイ
ブムタン地方はウールの織物「ヤタ」が有名な場所。チュメ谷にあるスンゲイはそのヤタを織っていることで非常に有名な集落です。
街道沿いには数軒の工房兼お土産物屋さんが建ち並んでいます。
ニマルン・ダツァン
ヤタで有名なスンゲイの集落を過ぎてしばらく走ると右手奥にニマルン・ダツァンが見えてきます。ダツァンとは「学堂」のこと。このニマルン・ダツァンはニンマ派の学校としての役割を持っており、今でも多くの僧侶が日々仏教の教えを学んでいる僧院です。毎年初夏にニマルン僧院で行われるニマルン・ツェチュの最終日にはトンドル(大タンカ)がご開帳されるのですが、実はこのニマルン僧院のトンドルは日本の方が寄進されたものなのです。
キキ・ラ(峠)
標高2900mのキキ・ラ(峠)は中央ブータンのチュメ谷とブムタンの中心地・ジャカル(チョコル谷)の間の峠。この峠を越えるとジャカルの中心地・チャムカルの街はもうすぐです。
チョコル
チャムカルの街
中央ブータン・ブムタンの中心地であるジャカルのメインストリートをチャムカルと呼びます。ここは現在のブムタンの生活の中心となる場所。街道沿いに数多くの商店やレストランが軒を並べています。
何度か大きな火事が原因で大きな被害を受けているのですが、その都度復興し、街はどんどん大きく発展してきています。
ジャカル・ゾン
中央ブータンの中心地・ジャカル。そのメインストリートであるチャムカルの街を見下ろす丘の上にジャカル・ゾンが建っています。
「ジャ」とは鳥、「カル」とは白を意味する言葉。昔この地に白い鳥が舞い降り、そこに寺院が建ち、その後現在のゾンが建てられたと言われています。
ウォンディ・チョリン宮殿
初代国王ウゲン・ワンチュクはこのウォンディ・チョリン宮殿で産まれ育ちました。
ブータンの王室が現在の首都・ティンプーに移った後はここに住む人は誰もおらず、すっかり寂れてしまっていたのですが、現在この建物を博物館にすべく改修工事が進められています。ウォンディ・チョリン宮殿の内部建物に描かれた龍と床に残されたユンドゥン(卍)のマークが王家との繋がりを物語っています。
ジャンパ・ラカン
中央ブータン・ブムタン谷を代表する古刹ジャンパ・ラカン。パロのキチュ・ラカンと同じく7世紀にチベットのソンツェン・ガンポ王がチベット圏に横たわる羅刹女の体を封じ込めるために建てたお寺の一つと言われています。
ご本尊はその名の通りチャンバ(弥勒菩薩)像。この寺院にはブムタンからはもちろんのこと、ブータン全土から多くの人が巡礼にやってきます。
クジェ・ラカン
ブータン王家と非常に関わりの深いクジェ・ラカン。第2代、第3代国王陛下の葬儀はこの場で行われました。中庭には第2代、第3代国王陛下が荼毘に付された場所があり、その場にはチョルテン(仏塔)が建っています。
「クジェ」とは「体の影」という意味で、このお寺の元となったパドマサンヴァバが瞑想したと言われる洞窟には今も彼の体の影が残っています。その洞窟は建ち並ぶ三つのお堂の、一番右のお堂内部に残されています。
タムシン・ラカン
16世紀に高僧ペマ・リンパによって建てれた古刹タムシン・ラカン。お堂内部にはご本尊グル・リンポチェを祀る小さなお堂があり、その周囲を薄暗い回廊が巡っています。その回廊の壁に描かれた壁画は創建当時からの物と言われています。保存状態も良いこの素晴らしい壁画は必見です。
回廊内には創建者のペマ・リンパ本人が着用したと伝えられる鎖帷子が置かれています。この鎖帷子を自身で背負い、回廊をコルラする事で悪いカルマが浄化されると言われています。以前は観光客も実際に鎖帷子を背負う事が出来たのですが、今はしっかりと鍵のかかった箱の中に納められています。
パドマサンバヴァ・ラカン
タムシン・ラカンから少し山の方に入っていくとパドマサンヴァバ・ラカンと呼ばれる小さなお堂が建っています。いつも鍵が閉まっているのですが、運が良ければ中に入ることが出来るかも?内部にはお寺の名前の通りパドマサンヴァバが祀られています。場所柄訪れる観光客は少ないと思いますが、ここから眺めるブムタン谷は本当に素敵な光景。小さいながらも由緒ある寺院です。
ケンチョスム・ラカン
「ケンチョスム」とは三宝、つまり仏法僧を意味します。このお寺もタムシン・ラカンと同じく16世紀に高僧ペマ・リンパによる創建と伝えられています。
2009年に火災が発生し焼失してしまったのですが、その後再建され現在はブータンでも最大級の寺院となりました。
ロダクカルチュ・ゴンパ
チャムカルの街を見下ろす山間に建つロダクカルチュ・ゴンパ。ここは元々チベットにあるお寺の分院として建立されました。
僧院長はパドマサンバヴァの弟子であるナムカイ・ニンポー・リンポチェの転生者。パドマサンバヴァの25人の弟子の一人で、空を飛ぶ力を持つとされるリンポチェです。
タン
メンバル・ツォ
タン谷に向かう道をしばらく走るとメンバル・ツォと呼ばれる聖地があります。
メンバル・ツォとは”燃える湖”という意味。ここはその昔テルトン・ペマ・リンパがこの場所で数多くのテルマ(埋蔵法典)を発見したと言われている場所。ペマ・リンパは火のともったバターランプを手に持ったまま、この川の底から数多くのテルマを発見したのですが、水から上がってきてもその炎は消えていなかったのだとか。
巡礼者たちはこの場にツァツァをお供えし、色鮮やかなタルチョを掲げ、祈りを捧げて行きます。
タン谷
中央ブータン・ブムタンのタン谷。メンバル・ツォからさらに先に進むこと1時間弱でこの谷に到着します。東と西を繋ぐ幹線道路からかなり外れ、奥へと入ったこの谷。そこには緑豊かな本当に美しい谷が広がっています。
タク・リモチェン
タン谷のメインの道路脇に巨大な岩があり、その手前にお寺が建っています。
ここがパドマサンヴァバが立ち寄ったとされる聖地タク・リモチェン。タクとは「虎」の意味で、そのひときわ目を惹く大きな岩に虎のような縞模様が見えることから、このように呼ばれています。
ウゲン・チョリン・ナクツァン
タン谷奥の小高い丘の上に建つウゲン・チョリン・ナクツァン。16世紀に建てられ、今も実際に生活の場であるこの建物。建物自体も素晴らしいのですが、ここにある民俗博物館は必見です。
数多くの貴重な品々がしっかりと系統だって展示されており、もちろんきちんとした説明書きも。ブータンの歴史、伝統、風習、文化。全てを知ることが出来る本当に素晴らしい博物館となっています。
中央ブータン・ブムタンまで来たらぜひタン谷まで足を延ばし、この民俗博物館を訪れて欲しいと思います。
ウラ
ウラ谷
中央ブータン・ブムタンのウラ谷。数年前にチュメ谷からウラへと繋がる新道が開通し、トンサからのアクセスも、ジャカルからのアクセスも良くなりました。
この谷はブムタンの中でも一番標高が高く、元々牧畜民が住んでいた場所。ブータンの中でもティンプー近郊のゲネカと並ぶマツタケの産地としても有名です。
ウラ・ラカン
ウラの集落の一番奥に建つひときわ目を惹く大きな建物がウラ・ラカン。ご本尊はグル・リンポチェ。内部の壁には所せましと美しい仏画が描かれています。
ブムタンからさらに東へ向かう際、時間に余裕があれば是非訪れてみていただきたいお寺です。
トゥムシン・ラ(峠)
ウラ谷からさらに東へ。ブータンの東西縦貫道はどんどん標高を上げていき標高3,740mのトゥムシン・ラへ向かいます。トゥムシン・ラはブムタンとモンガルの県境になっている峠。この峠を越えると東ブータンのモンガル県に入っていきます。